オープンソースの秘密兵器はBSD!  (2007年05月29日)

オープンソースには、ライセンスで定められた制約や自由があるが、それはGPLだけではない。
 ライセンスの種類によって、オープンソース・ビジネスに対する考え方は大きく異なると言うことが、一般にはあまり知られていないし、そこには大きなビジネスチャンスがある。

[FreeBSDウェブサイト]

GPL(GNU General Public License)は、OSI(Open Source Initiative)と言う「オープンソース」の定義を行った団体が認定した、多くのオープンソースのライセンスの中でも一番有名なものである。
 GPLを管理しているGNU(GNU’s Not Unix)自体は、もともとオープンソースではなくフリー・ソフトウェアの推進を行っていたこともあり、GPLでのライセンスはビジネス向きではないもの の、Linuxのライセンス形態となったことから、特に日本ではオープンソースのライセンスと言えばGPLとなってしまった。
 GPLとは、簡単に言えば、公開されたオープンソース・ソフトウェアの中身であるソースコードを改修した場合に、その配布などを行う時には必ず改修した内容を公開するというものである。

GPLに違反する行為に対する誤解も多い。
 オープンソース公開されたLinuxなどを基盤に利用して、アプリケーション・ソフトウェアを開発する場合は元となるオープンソース・ソフトウェア自体を改修しなければ問題ない。
 例えば、マイクロソフトが提供するWindows XPの上にアプリケーションを作って販売するのと、権利関係においては全く同じである。
 米国でのSCOの訴訟については、Linuxユーザーを訴えるということであったが、これはLinux OSの中にSCOが著作権を有するソフトウェアが一部含まれているということが理由であって、ただ漠然とオープンソースを使っているからと言うことではない。
 また、ユーザー企業としてこのソフトウェアを販売などしなければ、ソースコードを改修しても公開する必要はない。ゼロから開発するよりも、出来上がっているものを改修した方が安上がりとなる。

このように、GPLで提供されるオープンソースでもビジネス利用は問題なくでき、広がりを見せているが、もっと極端にビジネスに活用できるライセンスがある。

それが、GPLの対極となる代表的なライセンス、BSDライセンスである。
 このBSDライセンスこそが、オープンソースのビジネス・チャンスであり秘密兵器となる。BSDライセンスの最大の特徴は、改修したソースコードを公開せずにパッケージ・ソフトウェアとして販売しても構わないことだ。

オープンソースのOSと言うと、殆どの人がLinuxを思い浮かべるだろうが、私がこのビジネスを立上げた1997年ころは、もう一つのオープンソース (当時はフリー・ソフトウェア)OSであるFreeBSDも大きなシェアを確保していた。このFreeBSDこそが、BSDライセンスによるオープンソー スOSである。
 BSD系のオープンソースOSは、このFreeBSDを始めNetBSDやOpenBSDなどいろいろあるが、基本的には元は同じと考えてよい。

意外と知られていないことだが、最近PC分野でも再び注目を集めてきているアップルは、Mac OS XのベースとしてBSDを利用していることである。
 Mac OS Xは、まさにオープンソースをベースにアップルがGUIという化粧を施したものと言える。標準的なUNIXとしての機能をベースとする時に、このBSDラ イセンスは良い土台となった。アップルは、BSDライセンスのOSを改修して、自社OSパッケージとしクローズドにして販売しているがライセンス上問題な い。
 このようなBSDライセンス利用が、これからのオープンソースのビジネスとして広がる可能性が高い。

BSDでのビジネス・チャンスの本命は、アプライアンス製品や組み込み系システムである。
 ある意味Mac OS Xもアプライアンスと言えるかも知れないが、これから開発する様々な機器類をBSD系OSの改修により製品開発することで、ソースコードは非公開のまま他社へのアドバンテージを維持していくことができるからだ。
 現在の組み込み系のシステムは、シンビアンやTRON、Windows Embeddedなどの他に、Linuxも広がり始めているが、我がオープンソース陣営としては、Linuxではなく秘密兵器のBSDを前面に押し出していきたい。

iPodの対極とコンピュータ連携への期待  (2007年04月27日)

手軽さと適度な音質でiPodが受けているが、ピュアなハイエンドオーディオの世界から見ると貧弱な圧縮ファイルのデジタルサウンドでしかない。
 かってのCDを中心とするシステムコンポの普及と環境はよく似ているが、その対極となるべき面倒でファッショナブルでないが、超高音質を追求するピュアオーディオ勢力の台頭にも、コンピュータが不可欠な状況となってきている。

 

MSB iLink

最近、銀行時代の大先輩である炭谷さんの紹介で、iPodの対極とも言える機器を購入した。
 キーボードなど楽器関連メーカーであるKORGの「MR-1」という1bitデジタルレコーダーで、SACD(Super Audio CD)のフォーマットであるDSD(Direct Stream Digital)で録音再生できるポータブル機器である。
 これまでのCDは、PCMフォーマットで16bit 44.1KHzのサンプリングであるのに対して、DSDでは1bit 2.822MHzとなり、不連続のドットの密度が高くなって原音に近い音を追求する。
 20GBのハードディスクを搭載しているが、目的は高音質なので、1GBあたり22分の記録で7時間分ほどの容量となる。
 iPodなどのデジタル再生機器は、これまでのCDフォーマットである16bit 44.1KHzのWAVファイルも扱えるが、ほとんどがMP3などに圧縮していることから、音のクオリティはCDより劣化することになる。
 デジタルで録音するには、もともとアナログなソースの入力が必要になり、LPレコードの愛聴盤をいくつか入れてみた。この音をJBLのイヤースピーカーで聞くと、まったくリアルでiPodの音が聞けなくなる。
 ただ、問題はハイエンドオーディオと繋げた時で、この内蔵DAC(digital-to-analog converter)ではやはり不十分である。
 できれば、デジタル出力してDAC単体機器に繋いで鳴らしたい。

 

org MR-1


ビジネスのコンピュータ分野では、米国一色になっている現状だが、PCに音楽を取込めることで、これらのデジタルなピュアオーディオの世界との融合が進み 始めており、オープンソースを始めとするソフトウェアとの融合での追求が期待できる。iPodを含めてこのようなオープンソース・ソフトウェアは多数存在 している。

米国のハイエンドオーディオメーカーにおいては、iPodの取込みやUSB端子などの採用が広がっている。
  最近、元HPでLinuxもやったいた飯田さんから、米国のMSBというメーカーのiPod用デジタル出力ドックを試聴する機会を得た。標準のiPodで はイヤースピーカー出力(アナログ)しかないため、iPodを改造してデジタル信号を内部のDACに通さず、外部のDAC接続用端子に直接繋ぐ方法をとっ ている。
 小規模のオーディオシステムではiPod内蔵のDACでかなり満足できるが、大規模なオーディオになると不満は大きくなる。PCからのデジタル出力でも同様でなにかボヤッとした音になる。
 このiPod用デジタル出力機器は、このあたりを解決している。CDと同様の16bit 44.1MHzのPCMフォーマットだが、CDに比してメディアの回転がない分有利であるのと、本格的ハイエンドDACの成果が大きいのだろう。

ポータブルでは内部DACを利用して手軽に良い音が楽しめ、自宅ではさらにデジタル出力から高品質のDACと組合せることによって、ハイエンドオーディオ で楽しむことができる。これらのポータブル音楽プレーヤーのライン出力やイヤースピーカー出力では、十分な音質は得られないので、デジタル出力は必須となる。

このような状況から、我々オープンソース業界においても、実際の商品化も検討したくなる。
  ターボリナックスが発売しているWizpyにも、このようなピュアオーディオ的ポータブル音楽プレーヤーの方向を追求したら、iPodとの差別化もでき、 高価であっても特定ユーザーの間では大いに盛り上がるものになるだろう。原形があるだけに、拡張し易いのではないかと思う。
 非圧縮フォーマットの採用、デジタル出力の用意などが、追加機能となる。場合によっては、高品質DACや高級イヤースピーカーなどもオプションにできれば面白い。

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