オープンソースには、ライセンスで定められた制約や自由があるが、それはGPLだけではない。
ライセンスの種類によって、オープンソース・ビジネスに対する考え方は大きく異なると言うことが、一般にはあまり知られていないし、そこには大きなビジネスチャンスがある。
[FreeBSDウェブサイト]
GPL(GNU General Public License)は、OSI(Open Source Initiative)と言う「オープンソース」の定義を行った団体が認定した、多くのオープンソースのライセンスの中でも一番有名なものである。
GPLを管理しているGNU(GNU’s Not Unix)自体は、もともとオープンソースではなくフリー・ソフトウェアの推進を行っていたこともあり、GPLでのライセンスはビジネス向きではないもの の、Linuxのライセンス形態となったことから、特に日本ではオープンソースのライセンスと言えばGPLとなってしまった。
GPLとは、簡単に言えば、公開されたオープンソース・ソフトウェアの中身であるソースコードを改修した場合に、その配布などを行う時には必ず改修した内容を公開するというものである。
GPLに違反する行為に対する誤解も多い。
オープンソース公開されたLinuxなどを基盤に利用して、アプリケーション・ソフトウェアを開発する場合は元となるオープンソース・ソフトウェア自体を改修しなければ問題ない。
例えば、マイクロソフトが提供するWindows XPの上にアプリケーションを作って販売するのと、権利関係においては全く同じである。
米国でのSCOの訴訟については、Linuxユーザーを訴えるということであったが、これはLinux OSの中にSCOが著作権を有するソフトウェアが一部含まれているということが理由であって、ただ漠然とオープンソースを使っているからと言うことではない。
また、ユーザー企業としてこのソフトウェアを販売などしなければ、ソースコードを改修しても公開する必要はない。ゼロから開発するよりも、出来上がっているものを改修した方が安上がりとなる。
このように、GPLで提供されるオープンソースでもビジネス利用は問題なくでき、広がりを見せているが、もっと極端にビジネスに活用できるライセンスがある。
それが、GPLの対極となる代表的なライセンス、BSDライセンスである。
このBSDライセンスこそが、オープンソースのビジネス・チャンスであり秘密兵器となる。BSDライセンスの最大の特徴は、改修したソースコードを公開せずにパッケージ・ソフトウェアとして販売しても構わないことだ。
オープンソースのOSと言うと、殆どの人がLinuxを思い浮かべるだろうが、私がこのビジネスを立上げた1997年ころは、もう一つのオープンソース (当時はフリー・ソフトウェア)OSであるFreeBSDも大きなシェアを確保していた。このFreeBSDこそが、BSDライセンスによるオープンソー スOSである。
BSD系のオープンソースOSは、このFreeBSDを始めNetBSDやOpenBSDなどいろいろあるが、基本的には元は同じと考えてよい。
意外と知られていないことだが、最近PC分野でも再び注目を集めてきているアップルは、Mac OS XのベースとしてBSDを利用していることである。
Mac OS Xは、まさにオープンソースをベースにアップルがGUIという化粧を施したものと言える。標準的なUNIXとしての機能をベースとする時に、このBSDラ イセンスは良い土台となった。アップルは、BSDライセンスのOSを改修して、自社OSパッケージとしクローズドにして販売しているがライセンス上問題な い。
このようなBSDライセンス利用が、これからのオープンソースのビジネスとして広がる可能性が高い。
BSDでのビジネス・チャンスの本命は、アプライアンス製品や組み込み系システムである。
ある意味Mac OS Xもアプライアンスと言えるかも知れないが、これから開発する様々な機器類をBSD系OSの改修により製品開発することで、ソースコードは非公開のまま他社へのアドバンテージを維持していくことができるからだ。
現在の組み込み系のシステムは、シンビアンやTRON、Windows Embeddedなどの他に、Linuxも広がり始めているが、我がオープンソース陣営としては、Linuxではなく秘密兵器のBSDを前面に押し出していきたい。