「EUはソフトウェア費用の39%を米国の3社にただ支払っている。」
日本でも省庁や自治体は、多くの税金を米国のMicrosoft社に支払っている。我々国民からの血税が米国の1社に支払われている事実を、もっと認識すべきだ。
[青森でのセミナー風景]
文頭は、先日、私が事務局長を務めるNPO法人OSCARアライアンスが主催した「オープンソースCMS最新動向セミナ」に、米国から講師として招へいしたPaul Everitt氏の話の一部だが、久し振りにオープンソースの熱い講演を聞いた。
同氏は、ZopeやPloneなどを立上げ、現在はオープンソースのコンサルティングを行っており、米国に居を構えながらフランスなどを中心に活躍している。
CMSのベースとなるZope / Ploneのビジネスとしての歴史に触れたあと、ヨーロッパでのオープンソースのコンサルティング活動について、Lisbon AgendaやヨーロッパでのFLOSS report、Optaros社の調査など、様々な情報やデータを交えて説明していただいた。途中では”Revolution!”と叫ぶパフォーマンスも あり、なかなかの熱演であった。
[東京での懇親会]
まとめとして掲げられたのは、「オープンソースは現実であり、お金(ビジネスの意味か)である」「オープンソースは小さく始めて大きくなるもの(ベン チャー企業は頑張りましょう)」「オープンソースは”free enterprise”である」の3点だ。この”free enterprise”という言葉は、Red Hat互換のCentOS(the Comunity ENTerprise Operating Systemの略)の紹介などにもよく出てくるが、新しいオープンソース・ビジネスの”象徴”として良い響きである。もちろんこの”free”には、ただ 無償というだけではなく”自由”を示す意味も大きい。
以前からいろいろなところでお話ししていた内容だが、日本の省庁や自治体に導入されているパソコンは何台あるのだろうか。その中には、必ずといって良い 程MS-Windowsが入っており、MS-Officeが入っている。パソコン1台が15万円したとして、その内の2万円がWindowsの、6万円が Officeの費用となる。したがって、Microsoft社に支払われるのは合計8万円となる。
これがもしどこかの県庁に5000台入ったとしたら、Microsoft社へ支払う金額はいくらになるのか。単純に計算すれば4億円であり、台数割引で 7掛け程度となったとしても約3億円となる。このお金は県民の血税であり、ただパソコンに搭載されたソフトウェアということで、当たり前のように消費され てしまってはいけない金額だ。
この県庁が導入したパソコン5000台の費用5億円の内、血税3億円が米国の1企業にただ支払われることになる。 民間企業ともなれば、もっと大量の数万台というパソコン導入はたくさんある。
数億円、数十億円という金額が、単純に何の疑問もなく米国の1企業に支払われているのだ。これは血税ではないかも知れないが、この費用は将来ワールドワ イドで戦う日本企業にとって足かせになってしまうこともある。ヨーロッパやアジアの国々とその企業は、確実にオープンソースに切換え始めているのだ。
さらに問題は、Microsoft社の収益構造である。
Microsoft社が開示している2006年6月期のアニュアル・レポートによると、事業セグメント別の売上や営業利益が掲示されており、 WindowsXPなどクライアントOSを含むClient部門での営業利益率は「77.2%」、MS-Officeを含むInformation Worker部門の同率は「70.4%」に及ぶ。
売上から売上原価を差し引き、ビル・ゲイツの報酬やTVコマーシャルなどの販売費および一般管理費を差し引いた後が営業利益であり、これで売上の 77.2%や70.4%あるのだ。明らかに儲け過ぎである。ここには、日本やヨーロッパの国々から支払われた税金がたくさん含まれているのだ。
このように独占的事業を行うことにより、これだけ多くの利益を弾き出して、企業買収や訴訟和解などの費用を使うことで、表面的には適正規模の営業利益率にして、あまり非難も受けずにMicrosoft社は巨大化していったのである。
今回、Paul Everitt氏が講演でも指摘していたように、EUの人たちは納税者としてパソコンという固まりに見えるものに対しても、そのソフトウェアの使いみちに クレームを付けている。オープンソース以外のソフトウェアを使わないように法制化するのにも積極的だ。
日本では、ITやコンピュータの話となると尻込みして、業者の言いなりになってしまう人たちが多いが、これをしっかりと見直し、Linuxや OpenOffice.orgなどのオープンソースを利用することで、大きなコスト削減による米国1企業への税金(?)カットが、非常に単純に簡単に実現 できるのだ。
2007年1月に、日本においてもビル・トッテンさんで有名なアシストが、Microsoft社のオフィスソフトをすべて排除し、オープンソースのOpenOffice.orgに切換えて話題となった。大きなコスト削減の実現である。
本気になればできることである。
ましてや、省庁や自治体の予算は税金で成り立っている。
税金を有効に使うためには、是非、ソフトウェアの見直しを積極的に進めようではないか。